この川を渡ったら 彼岸へ行ける。
この体を抜けて 君の許へ飛んでいける。
ある日始まったそんな思いが
わたしの心を占めていく。
届くなら 彼方の岸へ行ってしまおう。
夢の中で どんなにあがいても
辿り着けない。
朝になれば 此方にある体へと
戻って来てしまうのだから。
毎日繰り返す終わらない夢。
・・・
きっと知っていたんだね
ある日君からやって来て
あちこち飛び回り
いつか行った場所へ
知らない場所へ
遊びに行って
長い時間 それはそれは楽しかった。
下を向いて 歩いていることに気付いて
いつの間にか並んで歩いた
見慣れた階段。
手を繋いで歩いて行った坂の上。
君が先に逝ったから
わたしが〇〇家と書いた 墓石塔。
手前で 『じゃあな。』
私の手を振りほどいて
掌に一杯の温もりを置いて
消えていった…。
あの日だけ。
もう二度と夢に訪れることはない。
ずっと側で見守り続ける 君がいて
彼岸には行けず仕舞い…。
肉体に繋がれたまま
あちらへ こちらへと
身体毎飛んでいく。
誰かや 何かを使って
訪れる世界には 何かが遇って…。
それは やっぱり
見えない君の仕業かもしれない。
大きな力がやって来て
守ってくれているのだと
今は 疑うことはない。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
・・・
あり得ない。
だって…。
君の隣に居たわたしは
君を愛するだけで精一杯で
君が愛してくれることを
いつも夢にみて
それだけの
可愛らしい女（ひと）だった。
玄関で三つ指をついて言う
『おかえりなさい』に命懸けだった。
笑ってしまうくらい
大好きな想いを
受け取ってくれた人。
肉体を持たなくなってからも 尚
囁くように しるしを置いて。
それは
あの日
あの頃
空っぽになったと思ったのに…。
今
愛だけになったわたしを見つけ
好い人に出逢わせてくれる。
愛に目覚め 愛を語る人。
時は全てを変化させ
わたしも変わりゆくもので在ることを
見せていく。
年を重ねるのは
悪いことじゃない。
あの時の哀しみは無くなりはしないけど
形を少しずつ変えて
心を傷つけずに思い出せる程
柔らかいものになっていく。
あの日の夢が訪れることは
もうないだろう。
例え 有ったとしても
今度は そのまま彼岸に
逝ってしまえそうな気さえする(笑)
今 夢が見せていく
淡く霞んだ物語が
目の前の現実へ現れて
わたしを何処かへ運んでくれる。
きっと好いことしか起こらない。
愛を
希望の光を見つける為の
残された時間だから…。
曇り空の下
肌寒い空気に包まれて
あなたの幸せを
お祈りします。
mary
