あなたへの手紙・日向真理愛

未完成の人生を生きる私が「あなたに会えてよかった。」そう手紙を書きます。

あなたへの手紙✨道具

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我が家には鋼の包丁が三本あります

 

一本目は 

結婚して生まれ家から

独立した時  揃えたもの

 

二本目は

地元で正月に行われる

だるま市で買い求めたもの

 

三本目は

京都へ一人旅した時

錦市場で一目惚れして連れ帰ったもの

 

皆  高価な代物では無いけれど

想い入れが有るものばかり…。

 

暫く  置き去りにしたままだったので

 

錆を帯びてしまった包丁を

砥石の上で 往ったり来たり…。

 

我が家の砥石は

仕上げに使う  柔らかいものなので

ゆっくり時間をかけて 磨きます

 

細く水を流しながら  鋼の光が戻るまで

砥石の上で往ったり来たり

 

元通りにはならなくても

光を取り戻し  刃物として

その姿が蘇りますように…。

 

                              ***

 

昔から使っている道具たちは 

皆  手入れに応えてくれるもの

 

使い続けていたら  それほどに

痛むことは無いのかもしれません

 

使う道が無くなって 

長いこと  置き去りになったなら

 

もの言わぬ物たちは  持ち主が気付くまで

変わりながら黙って待っていてくれます

 

一心に砥石の上で磨いても  なかなか

錆びでついた黒い模様は抜けません

 

作ってくださった人の顔は 知らないけれど

使い好い包丁を鍛えてくれた想いなら

伝わってくる気がします

 

これからも少しずつ  磨いていって

美しい姿になったなら 

包丁に許してもらえるかしら…。

なんて  思います

 

大切にしたら  応えてくれて

 

一人前の食事を支度するのには

恵まれた  道具たち…。感謝して

もう少し使わせて貰います

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

砥石の上で  手元を往ったり来たり

させながら  最初の一本目の包丁が

ずいぶん小さくなった気がして

ふっと手を止めて眺めます

 

子育てをしていた若い頃には 

固いものを無理に切って 

歯のこぼれてしまった包丁も

 

実家の父が  丁寧に

時間をかけて磨いてくれて…。

 

その頃の父よりも 

年かさが増した  わたしが今

あの頃よりも  小さくなった包丁を

砥石の上で往ったり来たり磨いています

 

亡くなった愛する人も 

年に一度  年の暮れ

のし餅を切り分けてくれました

 

包丁を握る手の温もりに重なって

有難い…気持ちが

砥石の上で  往ったり来たり

 

 

銀色に光る  美しい包丁ですが

本来は切ることが仕事です 

 

手をかけて  切れ味の好くなった包丁で

美味しい食事を作るのは 

本当に 心地好い時間です

 

そのものの  使い道を全うするのは

人も  物も変わらないのかもしれません

 

何気ない日常の

助けになる道具たち

仕事や  大切な場所で使うもの

使い慣れたものなら  尚更大切に思います

 

そうしたものと  共に 

時を重ねられたら幸いです

 

きっとこの先も

心地好い時間が流れるのでしょう

 

人の手になり 

力を貸してくれる道具たちと

心を込めて  大切に暮らします  

 

そうしたら  使うのが

なんだか楽しくなるのです

 

楽しいと  手入れも苦にはならないで

その度に  気持ち好く使えます

 

手に馴染んだ  道具は

他のものでは  代わりが務まりません

 

そのくらい仲良くできるものたちに

囲まれて暮らせたら 

幸いなのかもしれません

 

今週から  いつもの年と同様に

寒い日になるそうです

白菜やお野菜を切って  お鍋も素敵…(*^-^*)

 

暮らしやすいものと  寒さの日々を

楽しく過ごせますように…。

 

息が白くなる程

冷たくなった大地の片隅で

あなたの幸せをお祈りします

mary