訳者の世界
『こんなにも訳す人の言葉によって
感じが変わるものなのだ。』
言い変わる言葉の魔法。
そんな事を感じた本だった。
文庫本のきれいな装丁で平積みされた
【星の王子さま】を見て
何となく買い求めた日。
厚目の紙質に気を良くして読み始めると、
家の本棚に眠る 色褪せた同名の絵本で
最初に登場する“うわばみ”は
何処にもいなかった。
代わりに大蛇ボアが出て来た。
薔薇の花
飛行士
狐
その他は同じように登場するのに
何となく感じが違う。
読んでいくうちに、こんな感じ?
不思議な感覚に浸りながら最後まで一気に読み進む。
全然違う後味だった。
言葉はその人を介して届けられるものなのだ。
と、改めて思う。
作者の文章そのままを読んで、読んだ人が受け取る物語が幾通りにも変化する。読み手の側に物語の世界は組み立てられていくものなのだ。
ましてやそれが、訳する人を介したら読み手の世界は様々に広がって行く。
著者のサン=テグジュペリ+訳者の河野万里子から流れ出てくる物語に新しく出逢ったということらしい。
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昔読んだ、少し前に夢中になった本も
今触れると違うものに感じるだろう。
訳者が違わなくても
受け取る此方側の世界の広がりが
物語を豊かにしたり、しなかったり。
妄想💦❔空想💨❔は大切なエッセンス。
新訳 星の王子さま。
短い時間で読むことができて
新鮮な感覚に浸ってみるのも良いかもしれない。
読書の秋は終わるけれど
長い夜の友として本に夢中になれるのは
自分を満たす幸いな時となる。
言葉を受け取って自分の中で熟成させて
いつか自分の言葉として発するとき
それは固有のものとなる。
そんなことを一冊の本が届けてくれる。
生きているって嬉しいことがいっぱいあるのだ。
寒い日の夜、夢中になることが
あなたに豊かな時間を届けることを願います。
mary