庭に小さなクチナシの木があります
嫁ぎ先の父が西に口が無いように
所帯が傾かないようにと植えてくれた
八重咲きのクチナシです
この数年 体調を言い訳にして
庭仕事をしないまま
荒れてしまった庭には
葛の蔓や藪カラシが幅を利かせて
根元に光が当たらない木々は
元気が無くなっていました
この春から少しずつ 草を刈り
木の枝を剪定し 土を整えて
草刈りをしていると
隠れて枯れかけていた植物が顔を出し
まるで伸びをしているようです
その一つがクチナシの小さな木
枯れ木のようだった細い枝は
青々と葉が繁り その枝の先に
今朝小さな蕾を見つけました
朝数えたときは7つ
夕方には10も見つけて
嬉しくなります
まだ青い 本当の姿は隠れたまま
けれど確かにクチナシの花の蕾
根が耐えなければ 再び生きて
花を付けられるまでに回復できる
生きていれば再生する
お手本のよう
梅雨に咲くクチナシの白い花は
雨にも負けずに咲くのです
生きている この命をなげないで
大切に大切に育ててみたら
また違った花を咲かせられる
…かもしれません
生き物は 直ぐに型が見えなくて
本当の姿を見つけるには
毎日毎日 見て触れて語りかけながら
互いの姿を見つけ合うのでしょう
それは楽しみ以外の何ものでもない
光を彫り出していくような
希望に満ちたことです
庭の木には
父の姿が映ります
この世にはもういない けれど
確かに其処にいるのです
クチナシの まだ開くには少し早い
小さな蕾
その時が来たならば
白く輝く生命の姿を形にして
目の前に現れるから
毎日心を向けて 待つのです
花の姿形は様々に 彩りは色々に
誰かでなくて自らの尊い花を
咲かせながら生きられるなら
それだけで
梅雨の日の楽しみは
まだまだ あります
梅雨には 梅雨の楽しみを
来る夏には 夏にしかない喜びを
思い切り味わえますように
目の前の世界の内に
光る何かが見つかりますように
mary