雷鳴とどしゃ降りの雨
ハラハラしていたのも束の間
どしゃ降りの雨なのに
太陽の光がふり注ぎ
光は七色の橋になりました
そう…。こんな雨の日には
空に大きな虹がかかります
彼方へ行かれそうなほど
高く遠く橋は伸び
手が届きそうなほど
袂は近くに見えるから
追いかけてみたくなるのです
けれど 足早に通り過ぎる雨雲は
虹の色を刻々と薄くして
光の欠片が滲んでいきます
懐かしいのと 畏しいのが
心の中で交ざり合い
まるでマーブリングの
絵を見るみたい
自然は美しい だから
美し過ぎて畏ろしくなるのです
人の手には届かない沢山の理が
形を成しているようで
写真には映らないと解っていても
雨に濡れたスマホを向けて
その一瞬を追いかけてしまいます
＊＊＊
一瞬 思考は過去の日の
鮮やかな虹へ飛び移り
頭の中に映像が動き出します
いつかの日にもこんな風に
どしゃ降りの雨
ビルからビルへ
大きな橋を架けました
あまりにも大きく
鮮やかな虹だったから
よいことがある兆しのようで
でも やっぱり
どこか畏ろしかった
真っ白で無機質な部屋の窓から
別の世界を見た日の記憶
痛みと共に蘇ります
・・・時を刻んで
畏れは形を変えました
美しいものを
唯美しいものとして 感嘆し
無邪気に追いかけられる
そんな日が来るのだと知らされて
ある日のままで
変わらずに居ることもできなくて
心の中 虹は虹にかえります
あの日の虹と今日見た虹の
美しさだけ受け取って
新しい虹を見た幸いを
噛み締める日が来るなんて…。
辛い記憶は時の中
淡い光に包まれて
実感のある
遠いものになっていきます
＊
どしゃ降りの雨が止むのも
あと数日…。
陽射しは暑さをよんで
大地を熱し乾かしていくでしょう
大きな悲しみに途方に暮れて
涙に濡れて生きるのは
苦しいけれど
いつか光に照らされて
喜びへ 七色の橋が架かる日が
訪れることを祈ります
空と大地が穏やかで
あなたが健やかでありますように…。
この世界の片隅でお祈りします
mary
