あなたへの手紙・日向真理愛

未完成の人生を生きる私が「あなたに会えてよかった。」そう手紙を書きます。

あなたへの手紙・お釈迦様

気づいたら、外から聞こえてくるのは、秋の虫の声です。

もうお彼岸 。

 

 

少し前の昔話。

 

昔、むかしあるところに

病で大好きな人を亡くした女の人が居ました。

ずっと一緒に暮らして居ました。

そして、二人はずっと一緒に年をとって

おじいさんとおばあさんになると

誰も疑いませんでした。

 けれど、おじいさんになる前に、

一人天国へ行ってしまったのでした。

.....。

 

大好きな人が天国へ行ってしまって

半年ほど経った頃、その家に木彫りの仏像がやって来た日のお話しです。

 

女の人は

元々、木で作ったものが大好きです。

そして縁ある物を迎えます。

 大好きな人を失った哀しみよりも

できることを何でもしてあげたくて

大好きな人が天国で困らないように

お釈迦様を探し求めていました。

 

思い立ってから半年以上探し歩く日々。

「何処かに居る。」妄想に近い確信がありました。

あちこちの仏具屋さんを見て回りました。

木彫の教室、展示場にも出掛けて行きました。

 

何処にもいません。

そこで、お世話になっている石材店に相談したのです。

仏像を扱う卸屋さんを紹介してくれました。

 

夏の初めの暑い日。石材やさんと女の人は二人で静岡のお店を訪ねました。

 

大きな お店で、品の良い初老の女性が丁寧に話を聞いてくれました。

3人でお店の片隅のテーブルを囲みます。

 

其処へ職人さんが彫った白木のお釈迦様を、

奥から何体もお盆に乗せてお店の人が運んで来ます。

「みんな同じですよ。」そう言って

素っ気なく置いていくのです。

 

違うと言っては運んでもらい、

30体近い数のお釈迦様が目の前に並びます。どれも美しいお顔です。

 

けれど、女の人は思います。

どこかよそよそしい。

これは探している方ではない。

 女の人が

 「あ~やっぱり此所にもいない。」

諦めかけた時、いいえ、妥協しかけたその時のことです。

一緒に行った石材店さんが

「まだ、ありますよねぇ。」

と、言いました。

お店の人は、困った顔でもう一度

奥から6、7体のお釈迦様をお盆に並べて運んできました。

女の人は、また、お盆から一体ずつ手にとってお釈迦様と対面しました。

 

そして、3体目。

明らかに今までとは違っています。

 まだ4、5体のお釈迦様はいましたが、後は目に入りませんでした。

 

このお釈迦様に会うために此処までやって来たのだと女の人は感じていました。

 

大好きなあの人にそっくりだったのです。

 

女の人は、涙が溢れて止まりません。

探し続けていたものにやっと出逢えた喜びと、やり遂げられた安堵の思いが合わさっていたのでしょう。

そのとき 女の人は少しだけ救われました。

そうして大好きな人にそっくりの木彫りのお釈迦様は女の人の家に迎えられ、今も守ってくれています。

 おしまい

『このお釈迦様とは、その後も不思議なことが続くのですが、 それは、8月の終わりに書いたブログを見ていただけると嬉しいです。』

 

 誰でもが、会いたいと思い続けた末に、

会いたいと思えるものに出逢えた時

心の振動は、言葉にならない程なのです。

 

妄想?が形を成したのですが、

それだけでは語り尽くせ無いお話しです。

 

何かに引き寄せられてめぐり会う

ものや人。

 

 そう、

人との出逢いも同じかもしれません。

未だ今は影さえ見えない場所に居て、

在ると信じて探し求めて行くうちに

いつか妄想は形になって、

互いに引き寄せられて行く。

 

そんなことを疑いもせず、

今を見つめているのです。

 

そして

あなたが何かに、そして誰かに出逢うこと

その奇跡を遠くから願っているのです。

 

 mary