人生の大きな転機に遇うまでは
命を喪うことの意味も
今 恵まれている命のことも
深く考えることは
なかったような気がします
身体の中で コトコトと音がして
心臓から血液が送り出されて
幼い日の 眠れない夜などは
枕に付けた耳元で
規則的にコトコトと響く音で
尚更 目が冴えて困ったものです
生きている肉体の為せる業です
眠っていて 意識が及ばなくても
休まずに 身体は隅々まで
動き続けていてくれるのです
そんな自分の命は
絶え間なく動くのに…。
突然 この世界から去っていく
身近な人の命の終わりが巡る時
命の不思議に心が向いて
特別な空間が生まれます
去って直ぐ
居なくなるわけでなく
暫くは 遺された人々が
あらゆることに その命を見て
触れていくような気がします
喪った 命のことや
生きていることの不思議に
否応無く 深く深く関わって
命を より確かに感じる空間です
後から思うと それは
何か大きなギフトのようで
豊かなことかもしれないけれど
その瞬間には解らない
過ぎてから 過去の記憶を
幾度も繰り返し経験して
命のことを考える機会を
与えられているような気がします
＊＊＊
人生を生きるのは
それほど楽じゃないから
自然が変動して
暮らしに及ぶ危機に襲われたり
ある日 見えないものが
体内に侵入して及ぶ危機だったり
自分の細胞が ある日
新陳代謝を止めてしまったり
人の悪意に遭遇してしまったり
今までできていたことが
今はできなくなってしまったり
何処にいても 何をしても
不安という暗雲は
いつも希望の光を隠して
モクモクと未来に影を落します
そうして何十年何百年
何億年毎に繰り返される
この星の周期に遭遇しても
生き物は絶え間なく生まれ
形を変えて順応して
命を終え また生まれていきます
人に生まれ 人になり
人としての命を終えるまで
様々なものに触れながら
あなた（わたし）だけの
経験をして…。
暗雲の隙間から
天使の梯子が降りて来る
そんな 時々起こる
喜びや 希望を胸に
今日を過ごして
笑ったり 泣いたり
時には 怒って
あなた（わたし）の命を生きて
誰かにその経験を
話したり
分かち合えたり
背中を見せていたりするのです
・・・命は 突然
呆気なく 身体から離れていきます
その時までは 絶え間なく動き
メンテナンスして生き続ける
身体にしっかり結ばれて
命の経験をしていきます
誰かと比べられるものではない
唯一の命だから
大切に 大切にして…。
雷と大雨がやって来て
賑やかになった この世界の片隅で
あなたが健やかでありますように…。
お祈りします
mary
