今まで生きてきた時間の中で
痛みを感じる記憶がありますか？
そして その記憶を
呼び覚ますような《もの》がありますか？
写真やビデオのように
そのままを記録したものとは少し違います
《もの》に結び付いた
自分の中の記憶が
呼び覚まされることがあるのです
身の回りの片付けや 整理をして
しまってあった 《もの》に目を止めて
記憶が蘇ってくる感じ
誰にでも あるのかもしれません
特に思い入れが有った訳でもないのに
《もの》に触れた瞬間に
記憶の扉が開いていくようで
それは まるで
《もの》の中に閉じ込めてあった過去が
一瞬の内に吹き出してくるような
それとも じっと黙って時を過ごした
《もの》が やっと話し相手を見つけて
語り合うように
それはたぶん
一瞬のことなのに
遡った時を旅するみたいな
鮮やかに 所々ぼんやりと
再び追体験していくような感じです
だから 一つ一つがおしゃべりだと
なかなか片付けが進まなくて
笑ってしまいます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日 そんな
おしゃべりだった《もの》を
再び見つけて 違ったものに感じる時
回復している…？
そんな風に感じます
回復したのが 《もの》なのか 自分なのか
はっきりとは分かりませんが
それまでと 違った《もの》に見えてきて
同じ形 同じ色なのに
まるで違う感じがするのです
いつか見た日には 目の端に在るだけで
辛く苦しかった記憶の欠片が溢れていたのに
今また出逢うと しんとして黙ったまま
時には 記憶が流れ出して来たとしても
それまでより ずっと穏やかで
静かに変わっているのを感じたりするのです
《もの》なのに
生き物みたいに変化して
それが とても心地よい時
回復…していることを
感じるのかもしれません
身の回りに在る《もの》全てが
穏やかで在ったなら
それは とても心地好い空間になります
目に見えて 《もの》の姿は衰えて
朽ちていくこともあるけれど
《もの》にも回復力が隠されている
そんな気がして嬉しくなります
着るもの 食に関するもの
暮らす住まいも 形在るものは
時を経て変わっていきます
共に在るものたちが
心地好く在りますように…。
そして人も 《もの》たちも
穏やかでありますように…。
冷たくなった空気の中でも
あなたが幸せでありますように…。
mary
